埼玉医科大学総合医療センター 産婦人科・総合周産期母子医療センター母体胎児部門

Saitama Medical Center
Center for Maternal-Fetal and Neonatal Medicine

minimally invasive surgery最先端の低侵襲手術

最先端の低侵襲手術

婦人科手術と腹腔鏡手術

婦人科手術における腹腔鏡手術はここ数年でも急速に進歩してきており、現在、良性子宮疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症など)、良性付属器疾患(卵巣腫瘍、卵管腫瘍、異所性妊娠など)、骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤など)、早期の子宮悪性腫瘍(子宮体癌、子宮頚癌)の患者さんが保険適応となってきています。開腹手術と比べて創部が小さく低侵襲であり、美容的にも優れており、特に女性のお腹の手術を扱う産婦人科としては、患者さんのニーズが非常に高い手術です。ただし、もちろん技術も必要であり、我々も日々研鑽を重ね、保険適応のある疾患においては可能な限りの症例を腹腔鏡手術で行ってきました。地域の病院からの腹腔鏡手術目的の紹介患者さんも多数、紹介いただいています。

開腹
開腹
腹腔鏡
腹腔鏡
ロボット
ロボット

<図:創部の違い>

 

産婦人科でのロボット支援下手術の適応疾患

 2018年4月より産婦人科でも保険適応となり、現在では(1)良性子宮疾患に対する腹腔鏡下子宮全摘術、(2)早期子宮体癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術、(3)骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨固定術に対してロボット支援下手術が保険適応となっております。当科でも(1)〜(3)に対して全て、保険適応となる要件をクリアし、手術を実施しています。
ロボット支援下手術は従来の腹腔鏡手術よりも大きな子宮筋腫の方などでも対応しやすいですが、限界はありますので、安全性を考慮し開腹手術をおすすめさせていただくこともあります。まずは一度、診察を受けていただき担当医とご相談ください。

 

ロボット支援下手術のメリット

ロボット支援下手術も腹腔鏡手術のひとつです。執刀医がロボットをコントロールしながら行う腹腔鏡手術です。医師は下図のような、サージョンコンソールと呼ばれる操作ボックスで内視鏡画像を見ながら操作を行います。また、今後の改定がある可能性がありますが、現在では従来の腹腔鏡下手術とロボット支援下手術は保険点数が同じであるため、入院期間および入院費用は基本的に同等です。

ロボット支援下手術
ロボット支援下手術
ダヴィンチの鉗子

従来の腹腔鏡手術と比べ、ロボット支援下腹腔鏡手術では下記のようなメリットがあります。

  1. 高画質な立体視(3D)画像により、鮮明な視野を確保しながら、ロボットアームを操作して正確かつ繊細に手術を行うことができます。
  2. ダヴィンチの鉗子は、手首以上の540度の可動域と、柔軟でブレのない正確さを持ち、指先にも勝る繊細な動きを可能にしています。
  3. 創部が8mmと小さく、また術中の創部の摩擦が少ないため痛みが少なく、傷がきれいに治癒しやすいとされています。また、そのため早期の社会復帰もしやすいです。

上記のメリットのため、従来の腹腔鏡手術では困難であった巨大子宮筋腫の症例や高度肥満症の症例、癒着症例でも、安全に手術完遂可能な症例が多くなりました。

ロボット支援下手術
ロボット支援下手術
ダヴィンチの鉗子
 

当科でのロボット支援下手術の開始と変遷

2020年12月より、当科でもロボット支援下手術を開始しました。2021年4月からは子宮体癌、2021年12月から仙骨腟固定術も開始しました。2024年10月現在までで、計350例のロボット支援下手術を実施しました。幸い、これまで開腹移行や大きな合併症は1例もなく、安全に実施できています。1日縦2件の実施にも慣れ、さらに2022年4月からはダヴィンチ2台体制となり、当初2件/月であった手術症例数が、安定して10件/月程度実施できるようになりました。2023年11月には、1日縦3件も実施しました。

ロボット支援下手術
ロボット支援下手術
 

ロボット支援下仙骨腟固定術について

 骨盤臓器脱(主に子宮脱、膀胱瘤)に対するロボット支援下仙骨腟固定術を当科では積極的に行なっています。子宮は亜全摘(子宮頚部以外の部分の切除)し、仙骨前の靭帯とメッシュで固定します。

この方法は従来から行われてきた手術法(腟式子宮全摘術および腟壁形成術)よりも再発率が少なく、手術成功率・患者満足度のとても高い手術です。手術を検討したい患者様は、ぜひ一度、受診いただきご相談ください。

横から見た手術模式図
横から見た手術模式図